「(2003年5月25日の)俺の暴走アウトを見てる様だったよ」と言ったかどうかわからない菊池選手の天城仕様 |
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志村妄想暴走事件
事件は第一試合も佳境となった5回裏に起こる。
ボルメッツは前日相手の人数不足の関係で、2試合守備、代理守備、審判とほとんどの時間を労役につき、さらに攻撃では都合40周もダイアモンドを周回させられるハメになってしまった。
メンバーは傷む体に風車鞭を入れ、今日より参加の2名の力も得て、前半やや劣勢だった試合を建て直し、ジリジリと追い上げ、5回ようやく仕留めにかかろうとしていた。
点差は2点、とりあえずランナーをためたいところだったが、淡々とツーアウト、ランナーは一塁に小松、もうお腹お腹いっぱいのほとんどのメンバーは、本日より参加の菊池の一打に期待をかけざるを得ない場面だった。
だが、一人だけ、そんなことは微塵も考えていない奴がいた。
そう、打者菊池の後ろでエキストラランナーとしてスタンバイしていた志村だ。
今回の参加メンバーのほとんどが、30代も半ばを過ぎ、温泉に1日浸かったくらいではなかなか疲労もとれない中にあって、彼はまだ20台も半ばに差し掛からんとする血気盛んな若人。体力がありあまっている上に、このゲーム自身は
3タコ、欲求不満もピークに達していた。
そして、菊池の打球はチームの願いを乗せてレフトセンター間へ完全な長打コース。
ほとんどのメンバーが打球の方向へ意識している中、この男だけは違った。
まるで何かから解き放たれたかのように、ひたすら全力疾走していた。
志村が全速で2塁ベースを蹴る頃、ベンチはようやく事態が深刻化している事に気づく。
これは、ホームまで間に合わない。
レフト、センター間への打球は、いつの間にか内野まで来ていた。
志村はスピードを上げた。
駄目だ、止めろ。
三塁コーチは、両手を広げ叫んだ、シム!止まれ、ストップだ!
一瞬、志村と目が合ったような・・・気がした。
が、彼は全速で走るフォームを崩さない。
更にベンチから3人が飛び出す。
シム!止まれ!止まるんだ!!
それも、無駄だった。暴走且つ妄想列車と化した志村は4人の制止を全く見ない。
さらに加速をして、本塁へと突き進む、間に合うのか?
いや、実際間に合うのか?と思った人間はいないはずだ。
間に合わない。返球は彼が本塁を通過できる時間の数秒前には相手捕手さち選手のミットに収まっていた。
しかしである、その現実すら彼のレーダーは感知しない。
まるで、何も障害物のない場所を走り抜ける勢いで、本塁突入を敢行する。
こういうばあい、何らかの制御があれば、スライディングということになるのだろうが、そのまま走り抜けようと・・・だが、彼の進路にはミットが・・・どうする暴走列車。
次の瞬間、なんと暴走列車は前方にある障害物であるミットを神の手で跳ね除け本塁を駆け抜けていた。
神の手で跳ね除けられたミットから、白いボールがこぼれる。
セーフ?
いや、そんなことなどどうでもよかった。
そこにいた全員、あまりの暴走ぶりにしばしぼ〜ぜん・・・かける言葉が見当たらない。
ナイスラン!・・・じゃないよなあ、そこへ衝撃の裁定が下る。
「守備妨害で、アウト!」
一心不乱に走り続けた男に対する、
「この、ちっとは空気読めよ」
とも言いたげな宣告は、同時時間切れによるゲーム敗退を意味していたがその判定に、異議を唱える者は、誰一人としていなかった。
そして、この瞬間彼は、天城の伝説になった。
全てを出し尽くして、真っ白い灰のようになってベンチに座った志村。
そこには、複数のチームメイトから小言もどこ吹く風で
「母ちゃん、みててくれたかい?俺は今日風になったよ」
とでも言いたげな、なんだか知らないけどすべてをやりきった男のスッキリとした表情があった。
(注:実際言ってません、勘違いしないように)
「いや〜、いいもの見させていただいたよ、志村グッジョブ」
ゴロウさんにはただ大うけだった。
文責/永関 写真/小松、菊池
監督談話/
志村に抜かされなかった一塁ランナーの俺も誉めてちょ♪
まあ昔の菊池さん、そして志村、天城には何か魔物がいるんだろうなあ?
でも守備妨害はイクナイぞ。
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