地元開催で張り切る宇野。SFでの守備は神懸かってました。 |
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横浜で試合しませんか?
先方からの誘いをチーム内で検討するためメールしたところ、参加希望者が次から次へ。
普段は埼玉南部や東京北部で活動しているボルメッツが、久し振りに多摩川を越えて神奈川県で試合を行う事になった。
場所は横浜市にある、神ノ木公園野球場。
天然芝の球場でレフトのポール際だけが61mと極端に狭いが、外野は70m以上あるソフトボールにうってつけのグラウンドだ。
そんな誘いをした先方とは・・・?
独立リーグであるMLS(ムーンライトリーグ)の前年度覇者である、セインツだった。
でも
また
なんで?
事情を知るのは、そのセインツにも所属している、ボルメッツの#59志村であった。
「実はサマーフェスタで、ボルメッツ対セインツ(つまり#34小松との投げ合い)がやりたかったんですよ」
8月下旬に行われたサマーフェスタでは、ムーンライトリーガーはただ試合をするだけでなく、スタッフ作業や観客としても楽しむコンセプトがある。
だが、開催ホストチームのセインツはさまざまな準備に追われており、ボルメッツと試合をすると全体の運営を行う上で支障が出る恐れがあったのだ。
ここは泣く泣く対戦カードを変更し、ボルメッツは今年の優勝戦線をぶっちぎるデビルズと対戦する事になった。
でも、そんな事情を知ったセインツサイドは、投げ合いを抜きにしてもボルメッツとは前々から手合わせしたかった・・・考えており、今回「せっかくグラウンドが取れているのだし、どうでしょうか?」と聞いてきたのであった。となれば今回こそ、セインツの志村VSボルメッツの小松と言う対戦があるか・・・と周囲もひそかに期待したが、ボルメッツの参加人数が大きく増減してしまい、直前になって志村はボルメッツ側でプレーする事となった。
結局は練習試合として双方とも助っ人を依頼する事になったのだが、セインツは助っ人にリーグ打撃部門上位の選手を多数招聘。
さながらオールスターのような布陣を強いてきた。
こうなれば一度は「今回こそは投げ合うかもね」と談笑していたボルメッツ投手陣も、いつもどおりの結束を強めて呉越同舟。
経験と思考で勝る小松と志村は、MLSの誇る強力な布陣をどう抑えるだろうか?先発マウンドはボルメッツは小松、セインツは近江となった。
規定投球回に及ばなかったものの、昨年も防御率1位の安定した投球を披露した近江。
リーグ優勝時は志村が13試合に登板し、10勝(リーグ新記録)を挙げる活躍だった
のだが、その影にはいつでもスクランブル登板できる好投手・近江の存在が常にハッパをかけていたのだった。
先行のボルメッツは、好投手・近江をいきなり攻め立てる。
トップバッターの米谷が幸先良くヒットで出塁し、続く助っ人参加の中村がヒットでチャンス拡大。
セインツが浮き足立っている隙に3番・原田で一気に先制・・・と行きたかったが、初球にファールを打ったところからセインツはポジショニングをアレコレと変更。これがまた打球が落ちてきそうなところに外野手が動する策士ぶりを発揮。
流し打ちを得意とする選手がかなりいるMLS。この程度まで対応してくるのは何てことありません。
しかしその更に上を行くようなバットコントロールで打ち返し、原田の2点タイムリーで先制。
裏の裏をかくような心理戦を制すると、4番の大島兄が豪快にセンターへ運んで連続タイムリー。
さらに続く助っ人参加の5番山田貴。かつてセインツの長距離ヒッターとして活躍したその打棒で3連続タイムリー。
6番の宇野以降は3者凡退に打ち取られるが、それでも初回だけで4点先制。
小松の投球をじっくり見に行くセインツ打線だが、小松はその慎重さを利用して初回はゼロに抑える。
2回のボルメッツは近江の術中にまんまとハマって0点。いよいよ、その脅威の投球術が牙をむく。
そのうちに小松が打線の急激な変貌に翻弄。長短打を続けざまに打たれてあっという間に4失点。
初回のリードはなくなり、2回を終わって4−4の同点。
試合のスコアは振り出しに戻ったが、冴える近江の投球術に対して、強力打線に掴まった小松の投球は今ひとつピリッとしない。
打線が繋がり始めてしまっては、同点であってもリードを奪われたも同じ。そんな気持ちにさせるのがMLS独特の強さとも言えるのだ。
試合の流れが徐々にセインツに動いていくのが、肌で感じてしまえる嫌〜な感じであった。
いつもならそのまま悪い方へ流されるはずだったが、それも束の間だった。
それをぶち破ったのは、ボルメッツのムードメーカー・只津だった。
「まだ同点!」
そうだった。まだ同点である。
MLSの強さとか怖さとか、そう言うのに簡単には翻弄されない選手が居るのがボルメッツの強み。
強さには強みで対抗して行こうじゃないの!
3回オモテのボルメッツ、1回のリプレイでも見ているように先頭の米谷がヒットで出塁。
続く中村がツーベースで続いて、さらに原田・大島兄・山田貴と3連続タイムリーで4点勝ち越し。
見事な攻撃だった。しかもこの後続かなかったのも1回オモテと同じ。
でも只津のワンプレー・・・いや、あのアクシデントが試合の流れを見事に落ち着かせた。
只津の豪快なスイングから、ボールはファールフェンスを高々と越えて住宅街へ。
これまでも青山などで只津のファールが場外に消えそうになったが、今日はついにファールが場外に消えて行った。
しかも住宅の目の前に駐車していた車の列へボールが・・・。
奇跡とも言えるほど、車の所有者が温厚な方で事なきを得たが、このスイングでセインツサイドが固まったのは確かだった。
それまでなんとか堪えて逆転のチャンスをものにしようとしていたセインツは、この場外ファールで思わぬ小休止を喰らい、完全にペースを掴み損ねた。
結局只津は三振してしまうのだが、アウト一つがこんなにも試合の流れを大きく変えてしまうものなのか。
以後、小松が少し立ち直ったのもあったが、セインツは1点を返すのが精一杯。
流れを掴んだボルメッツは小室の好リード、1塁・山口やSF・宇野の好守備などで少ないリードをキッチリと守っていく。
まるでセインツお得意の守り勝つソフトボールを、そっくりコピーしたように試合を優位に進めていく。
5回には米谷がこの日3度目の先頭出塁を達成。4番・大島兄のタイムリーで生還してリードを再び4点に拡げる。
小松も調子を尻上がりに上向けて、5回のウラも強力打線を全力で封じ込める。
1番から5番まででしっかりと得点し、7番以降はノーヒット。明確に打線は切れてしまったが、試合に対する集中力は切れていなかった。
6回ウラ、ピッチャーは小松から、ここ数試合リリーフで好投している志村にスイッチ。
普段は味方同士のセインツ相手に志村が投げる、本来なら起こらない対戦がいよいよ始まる。
セインツの助っ人選手の猛打に1失点こそするが、セインツの各バッターのデータはバッティングピッチャーで嫌と言うほど収集済み。
だからこそ「失投出来ないプレッシャーがあって、やり辛いったらありゃしないですね」と苦笑する。
2イニングを無難に抑えたかったが、最後にセインツは意地でチャンスを拡げて一発出れば同点まで持っていかれる。
ここで長年バッテリーを組み、投手・志村を育ててきたセインツの宍戸と直接対決。
お互いの手の内は知り尽くしたともに戦う盟友も、投手と打者に別れれば容赦なく火花が飛び散る。
しびれるような対戦は、息を呑む絶妙な投球の組み立てを魅せたバッテリーに軍配が挙がった。ガッチリと小室と握手して、勝利の輪がマウンドに出来た。9−6でボルメッツが勝利。
前日のリーグ戦でセインツサイドが多少疲れているのもあっただろうが、セインツそしてMLSの底力を再確認するような好ゲームだった。
サマーフェスタこそ敗れたが、やはり好ゲームを展開する良きライバルが居る事は、チームにとって見えない大きな財産だと思う。
またの機会の対戦を楽しみにしたい。
※翌日のメガロリーグ戦に備えて、洗濯のために家路に急ぐ各選手であった。
文責/志村 写真/小松
監督談話/「7番以下は今オフ特打ちだな、えっ!俺もだねっ(汗)」
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